
マレーシアのインターナショナルスクールでイギリス式カリキュラムを選ぶと、Year 10〜11でIGCSEを受験することになります。
Year 8~9くらいになると、学校から「IGCSEでどの科目を選びますか?」と聞かれるようになります。本人が好きな科目を選ばせてあげたいと思う一方で、親としては「できれば良いGradeも取ってほしい」「この科目を選んで、大学進学に影響しないだろうか」「ArtやPEなどを入れた方が、全体の成績は取りやすくなるのだろうか」と考えることもあると思います。
2026年6月のCambridge IGCSEの科目別結果が公表されましたので、今回はその結果を見ながら、IGCSEではどのように科目を選んでいけばよいのかを考えてみたいと思います。
Cambridge Internationalが公表した2026年6月試験の結果を見ると、科目によってA*を取得した割合にはかなり差があります。代表的な科目を抜き出すと、以下のようになります。
| 科目 | A* | A以上 | C以上 |
|---|---|---|---|
| Additional Mathematics (応用数学) | 26.1% | 51.7% | 86.1% |
| Mathematics (数学) | 18.9% | 34.7% | 72.9% |
| Physics (物理) | 20.9% | 44.5% | 81.5% |
| Chemistry (化学) | 16.9% | 44.1% | 82.9% |
| Biology (生物) | 14.7% | 37.3% | 77.1% |
| Computer Science (情報科学) | 14.3% | 42.3% | 86.4% |
| Economics (経済学) | 20.9% | 44.0% | 79.1% |
| Business Studies (経営学) | 10.4% | 27.9% | 70.6% |
| History (歴史) | 15.3% | 33.8% | 75.6% |
| Geography (地理) | 7.0% | 25.0% | 72.5% |
| Literature (English) (英文学) | 15.3% | 41.7% | 90.7% |
| Art and Design (アート&デザイン) | 6.5% | 20.0% | 65.7% |
| Design & Technology (デザイン技術) | 11.2% | 32.6% | 77.2% |
| Physical Education (体育) | 7.8% | 26.2% | 72.0% |
| Drama (演劇) | 11.7% | 40.2% | 87.2% |
| Music (音楽) | 18.2% | 45.8% | 90.8% |
出典:Cambridge IGCSE Candidate Grades, June 2026
Cambridgeの2026年結果では、例えばAdditional MathematicsはA*が26.1%、Physicsは20.9%でした。一方、Art and Designは6.5%、Physical Educationは7.8%、Design & Technologyは11.2%となっています。
この結果を見ると、私自身も少し印象が変わりました。
IGCSEの科目を選ぶ時、「MathsやScienceは大変そうだから、ArtやPEなども入れておいた方がGradeを取りやすいのでは」と考える方もいるかもしれません。
Additional Maths
26.1%
Physical Education
7.8%
Art & Design
6.5%
ところが2026年の結果では、上記のようにArt and DesignはA* 6.5%、Physical Educationは7.8%です。少なくとも、実技系の科目を選べばA*が取りやすくなる、という結果にはなっていません。
Artであれば、作品を作るだけではなく、長い期間をかけてPortfolioを仕上げていく必要があります。PEも、運動が得意であればそれだけで高いGradeになるわけではなく、理論部分も含めて評価されます。Design & Technologyも、作品制作だけではなく、設計や分析、Courseworkへの対応が必要になります。
こうした科目は、本人がその分野を好きで、継続して時間をかけられるかどうかも大切だと思います。その意味では、「A*を取りやすそうだから選ぶ」よりも、「本人が楽しみながら2年間取り組めそうか」という視点で選んだ方がよいのかもしれません。
一方で、興味深いのがAdditional Mathematicsです。2026年の結果では、A*が26.1%、A以上が51.7%でした。
一般のMathematicsはA*が18.9%ですので、数字だけを見るとAdditional Mathematicsの方がA*率は高くなっています。この背景にあるのは、Additional Mathematicsを選ぶ生徒には、もともと数学が得意な生徒が多いからでしょう。
科目ごとのA*率には、その科目を選んでいる生徒の特徴もかなり影響していると考えた方がよさそうです。
科目別結果を見ると、かなり高いA*率が出ている科目もあります。例えばMandarin Chinese (Foreign Language)は80.0%、Malayは68.5%、Arabicは53.5%、Germanは42.1%です。
ただし、この数字を見て「Mandarinを取ればA*を取りやすい」と考えるのも少し違うと思います。その言語を選ぶ生徒のバックグラウンドや、それまでの学習歴にも大きく左右されるからです。
Cambridge自身も、年度ごとの数字について、受験した学校や国の構成が変わることで結果が変わる可能性があると説明しています。ですので、この表は「どの科目が簡単か」というランキングとして見るよりも、「科目によってGradeの出方にはかなり違いがある」という参考資料として見ておくくらいがよいと思います。
Primaryくらいまでは、あまり将来の大学まで考えて科目を選ぶ必要はないと思います。まずは本人が学校を楽しみ、英語で学ぶことに慣れ、自分の好きなものを見つけていくことの方が大切でしょう。
一方、IGCSEを選ぶYear 9くらいになると、少しずつその先も見えてきます。イギリス式の場合、IGCSE → A-Level → 大学と進んでいくことになります。A-Levelでは、大学で学びたい分野によって必要となる科目が変わります。
そう考えると、IGCSEの段階でも、将来どんな分野に進む可能性があるのかを少しだけ意識しておいてもよいと思います。
IGCSE 科目選択
(将来を意識し始める)
A-Level 科目選択
(大学の希望学部に
合わせて科目を絞る)
希望学部へ進学
(A-Levelで特定の科目を
修了していることが条件)
以下の表は、将来の進む方向(学部)に合わせて、IGCSEとA-Levelでどの科目を選ぶべきかの「標準的なイメージ」です。
| 将来の方向 (学部・分野) | IGCSEで意識したい科目 | A-Levelで中心になる科目 | コメント |
|---|---|---|---|
| Engineering (工学) | Mathematics Additional Mathematics Physics Chemistry | Mathematics Physics Further Mathematics | 数学とPhysicsが中心。Further Mathematicsがある学校では、取っておくと選択肢が広がりやすい。 |
| Computer Science / AI (情報工学・人工知能) | Mathematics Additional Mathematics Computer Science Physics | Mathematics Further Mathematics Computer Science または Physics | 大学ではComputer Scienceそのものより数学を重視するケースも多い。 |
| Medicine (医学) | Biology Chemistry Mathematics Physics | Chemistry + Biology / Physics / Mathematics のいずれか | Chemistryは特に重要。Biologyも残しておくと選択肢を作りやすい。 |
| Biological Sciences (生命科学・生物学) | Biology Chemistry Mathematics Physics | Biology Chemistry Mathematics | BiologyだけでなくChemistryも大切。 |
| Economics / Finance (経済・金融) | Mathematics Additional Mathematics Economics | Mathematics Economics Further Mathematics | 上位大学ではMathsがかなり重要。Economicsを取っていなくても出願できる大学もある。 |
| Business / Management (経営・マネジメント) | Mathematics Business Studies Economics English | Economics Business Mathematics など | 大学によって必須科目が少なく、比較的自由度が高い。 |
| Law (法学) | English Literature (English) History Geography | Literature (English) History Economics など | 特定科目より、読む・書く・論理的に考える力が重要。 |
| History / Politics / Humanities (歴史・政治・人文学) | History Geography Literature (English) Foreign Language | History Literature (English) Politics Language | Essayを書く科目を残しておくとつながりやすい。 |
| Architecture / Design (建築・デザイン) | Art & Design Design & Technology Mathematics Physics | Art Mathematics Physics など | Portfolioを求める大学もあるため、作品づくりとの相性が大切。 |
| まだ未定 | Mathematics Additional Mathematics Biology Chemistry Physics English + 好きな科目 | 後から方向を決める | 進路が未定なら、MathsとScienceを早く外さない方が選択肢を残しやすい。 |

Engineeringを考えている場合は、Mathematics、Additional Mathematics、Physicsあたりは、できれば残しておきたい科目になると思います。Chemistryも分野によって役立ちます。
大学のEngineeringでは、A-LevelのMathematicsやPhysicsを求めるケースが多くあります。そのため、IGCSE Mathematics → Additional Mathematics → A-Level Mathematics / Further Mathematicsという流れを作っておくと、その後の選択肢は広がりやすくなります。
2026年のIGCSE結果だけを見るとAdditional MathematicsのA*率は26.1%ですが、ここで大切なのはGradeの取りやすさではなく、その後の進学につながる科目かどうかです。学校によっては、A-LevelでのMathematics / Further Mathematicsは一つの科目と思った方がよいとアドバイスするところもありますね。
Computer Scienceを志望する場合、「IGCSEでComputer Scienceを取ればよい」と思われるかもしれません。もちろんComputer Scienceを学んでおくことには意味があります。
ただ、大学のComputer Scienceでは数学を重視するところも多くあります。ですので、Mathematics、Additional Mathematics、Computer Science、Physicsあたりを組み合わせておくと、その後の進路を考えやすくなると思います。
2026年のComputer ScienceはA*が14.3%、A以上が42.3%でした。Computer Scienceに進む場合も、IGCSEの段階から数学を外さないことは意識しておいてよいと思います。
MedicineやBiology系に進む可能性がある場合は、Biology、Chemistry、Mathematics、Physicsをできるだけ残しておくと、その後の選択肢を作りやすくなります。
2026年のA*率は、Biologyが14.7%、Chemistryが16.9%、Physicsが20.9%でした。ここでも「PhysicsのA*率が一番高いからPhysicsを選ぼう」という考え方ではありません。
MedicineやLife Scienceに進むのであれば、A-LevelでChemistryやBiologyを選ぶ可能性があります。そのときにIGCSEでScienceを十分に学んでいないと、A-Levelに上がってから本人が大変になることもあります。まだMedicineなのかEngineeringなのか決まっていない場合には、Scienceを広めに残しておいた方が、後から進路を変えやすいと思います。
EconomicsやFinanceに興味のある生徒の場合、EconomicsやBusiness Studiesを選びたくなると思います。もちろん、それもよいと思います。
ただ、大学でEconomicsを学ぶ場合には、数学を重視する大学も多くあります。2026年のIGCSEでは、EconomicsがA* 20.9%、Business Studiesが10.4%でした。
この数字だけを見るのではなく、Mathematics、Additional Mathematics、Economicsのように、大学進学まで考えた組み合わせにしておくのも一つだと思います。
文系の進路を考えている場合は、English、Literature (English)、History、Geography、Foreign Languageなどが候補になると思います。
2026年の結果では、Literature (English)がA* 15.3%、Historyが15.3%、Geographyが7.0%でした。
こうした科目では、長い文章を読む、資料を理解する、自分の考えを書く、根拠を示して説明するといった力が必要になります。このあたりはA-Levelに進んでも使う力になりますので、本人が文系科目に興味があるのであれば、Gradeだけでなく、その科目を通してどんな力を身につけられるかも見てあげるとよいと思います。
Year 9の段階で、「将来はEngineeringに行く」「Medicineに行く」と決まっている生徒ばかりではありません。むしろ、まだ分からない方が普通だと思います。
そういう場合は、Maths、Science、Englishといった基本的な科目をしっかり残しながら、その中に本人が好きな科目を入れていくのがよいのではないでしょうか。
インターナショナルスクールでの学びや大学進学において一番の肝になるのは、「英語と数学」です。 まだやりたいことが見つかっていなくても、この2教科の力を落とさずにキープし、必要な科目を残しておけば、後から『やっぱりEngineeringに行きたい』『医学系にも興味が出てきた』となったときにも対応しやすくなります。
2026年の結果を見ると、科目によってA*率にかなり差があることが分かります。
ただ、今回の統計を見て感じるのは、「A*率が高い科目を探して選ぶ」だけでは、あまり意味がないということです。Additional Mathematicsのように内容としては高度な科目でもA*率が高いものがあります。一方で、ArtやPEのように一見するとGradeを取りやすそうに見える科目でも、A*率はそれほど高くありません。
結局のところ、本人が好きか、得意か、2年間続けられそうか、A-Levelにつながるか、大学進学の選択肢を残せるか。このあたりを一緒に見ながら決めていくのがよいと思います。
IGCSEでA*をたくさん取ることは、もちろん素晴らしいことです。ただ、A*の数を増やすことだけを目的に科目を選ぶ必要はないと思います。
本人が興味のあることを学びながら、将来「これを勉強してみたい」と思ったときに、その道を選べるようにしておく。IGCSEの科目選びは、将来の選択肢を残すための準備の一つと考えるくらいでよいのではないでしょうか。
Primaryのころは、学校を楽しみ、英語で学び、いろいろなことを経験する。Secondaryに入り、少しずつ本人の得意・不得意や将来の方向が見えてきたら、Academicな部分も少し意識していく。そのくらいの距離感で、子どもと一緒に科目を選んでいければよいと思います。
本記事のIGCSE Grade統計は、Cambridge Internationalが公表した June 2026 Cambridge IGCSE Candidate Grades をもとに整理しています。Cambridgeは、受験した学校や国の構成変化によって年度ごとの数値が変わることがあると説明しており、結果はResults Enquiry等により変更される可能性もあります。
また、科目別のA*率は、その科目そのものの「難しさ」を表すものではありません。生徒の得意分野、母語、学校の科目選択、受験する生徒層などによって結果も変わります。
大学進学先ごとの科目選択例は、2026年時点で一般的に見られる進学要件や代表的な大学の科目要件を参考にした「標準的なイメージ」です。大学・学部・入学年度によって条件は異なりますので、実際の出願時には必ず最新のEntry Requirementsをご確認ください。
「IGCSEでどの科目を選べば将来の進路に有利か」「成績データだけでは分からない学校の雰囲気や、我が子に合う環境をどう探せばいいか」「将来の目標に向けて、どの学校からスタートすべきか」など、ご家庭ごとの教育移住プランはぜひ弊社にご相談ください。