2024/10/29
弊社では、日本人のお客様をマレーシアのインターナショナルスクールへご案内しています。
多くのお客様は、可愛いお子様に早い時期から英語の環境に溶け込んでもらい、英語を使いこなせるようになってもらいたいとの思いから、マレーシアへの教育移住を検討されています。
お子様の将来の可能性を広げるこのような教育移住は、弊社としても、意義があるものとして微力ながらサポートをさせていただいています。
このサポートをしている中で、お子様に身につけてほしい英語力のレベルには、親御様ごとにかなりの差があると感じることがあります。
そこで、言語習得のプロセスを踏まえ、お子様がどの成長段階で英語を身につけようとしているのか、また、その際の注意点をまとめてみたいと思います。
多くの日本人は「日本語を操れている」と考えていますが、果たしてそれは本当でしょうか?
もしそうであるならば、どうして大学受験の現代文の試験で、日本人全員が満点を取るのが難しいのでしょうか?
大学受験の現代文では、題材の文章を読ませて、漢字の読み書き、論理的な解釈、文法の理解、著者の主張の言い換え、要約の作成など、さまざまな観点から日本語の能力が試されます。そのため、問われる能力はさまざまで、日本語を話せるからといって、試験問題が簡単に解けるわけではありません。
家族との会話で問題なく意思疎通できている人でも、日本語の本を普通に読める人でも、現代文という日本語の試験で満点を取るためには、それ相応の努力が必要であることは理解いただけると思います。
日本語でも、「1.生活に支障のない日本語レベル」と、「2.学問的に通用する日本語レベル」との間には、大きな違いがあります。
また、私の社会人経験からいえば、社会人として使う日本語は、「2.学問的に通用するレベル」よりさらに高度なレベルを求められることがあります。
例えば、議事録をまとめ上げる日本語力がその一例になります。議事録では、会議の内容を正確に把握し、ポイントを絞って要約して、決定事項やアクション事項をまとめる必要があります。また、Webマーケティングにおける文章作成では、単に日本語ができれば良いのではなく、読者の関心を引きつけるテーマで文章を書いたり、顧客の心理面も意識した文章にまとめ上げたりする必要が出てきます。
そう考えると、上記の2つの日本語レベル以外にも、「3.ビジネスで通用する日本語レベル」という大きく3つのレベルに分けることができるかと思います。
一般的に、日本人が「日本語を操れている」と思う日本語レベルは、多くの場合、「1.生活に支障のない日本語レベル」のことを指しているかと思います。
日本人が「日本語を操れている」と思っているレベルは、「1.生活に支障のない日本語レベル」でした。
では、マレーシアのインターナショナルスクールにお子様を入学させた場合、どのレベルの英語力を身につけさせたいでしょうか?また、そのレベルに到達するにはどのぐらいの歳月が必要でしょうか?
お子様がインターナショナルスクールに通い始めると、まずは先生やクラスメートが話す英語を聞く時間が多くなります。その結果、英語を聞く力が徐々に身についてくると思います。
そして、聞く力がある程度備わってくると、聞いた内容から英語を話す力も備わってきます。日常的によく聞く音をインプットし、それを自分でもアウトプットできるようになるという状況です。
このレベルには、インターナショナルスクールに入ってから、1~2年程度で到達するのではないかと思います。簡単な単語や文章であれば、会話のキャッチボールができる状態です。
その後、教科書の英語を読み書きするうちに、学年相応の英単語も理解し始め、簡単な英文を読んだり書いたりできるようになってきます。このレベルは、先ほどの分類でいえば、「1.生活に支障のない英語レベル」になるかと思います。
マレーシアに教育移住されるご家族の中で、1~2年の短期間で日本に帰国することを考えている場合、お子様が習得できる英語力というのは、「1.生活に支障のない英語レベル」になります。
また、残念なことに、聞く力と話す力に依存した英語力は、忘れてしまうのも早く、日本に帰国して数年も経てば、その英語力はなかったものになるでしょう。逆に、日本語力を成長させる大切な時期を、忘れてしまう英語のために無駄にしてしまったとも言えます。
一方、日本人が現代文の試験で常に80点以上を取れるような日本語レベルに相当する英語力として、「2.学問的に通用する英語レベル」を身につけるには、5〜10年の時間はどうしても必要になります。そして、このレベルの英語力がなければ、海外の大学への進学も難しいでしょう。
このように、「1.生活に支障のない英語レベル」でよければ、短期的に習得が可能ですが、「2.学問的に通用する英語レベル」を目指すのであれば、中長期的な学習が必要になります。
さらには、インターナショナルスクールの授業だけではそのレベルへの到達は難しく、IGCSEやAレベルといった試験対策として塾なども活用して、英語力を向上させていく必要があります。
「お子様にどのレベルの英語力を身につけさせたいのか?」、「そのために必要となる時間や努力はどのぐらいなのか?」を理解し、マレーシアへの教育移住を計画されると良いでしょう。
教育移住を始める際、お子様の年齢は何歳でしょうか?
幼稚園児、小学生低学年、小学生高学年、中学生、高校生と年齢によって言語習得のプロセスは異なります。
小学生高学年から高校生のお子様の場合、すでに日本語脳ができており、英語の習得にはその日本語脳を活用していると考えましょう。我々親世代が英語を習得したのと同じように、日本語と英語を脳内で変換させながら学ぶプロセスになります。
日本に住みながらも英語を使いこなせるプロフェッショナルはたくさんいるように、このような日本語脳をベースとした英語学習でも十分英語は習得できます。
しかし、英語を習得することより重要なのが、日本語脳のレベルを上げ続ける必要があるということです。日本語脳の成長が一定レベルで止まってしまうと、英語変換する際の適切な日本語が見つけられず、英語の能力は日本語の能力に引きずられ、英語を頑張って学んでも思うように成長しない可能性が出てきます。
例えば、日本語脳のレベルが小学生高学年の状態で、インターナショナルスクールのセカンダリーレベルの英語を習得しようとしても、英語から日本語に変換する言葉がなく、そのため脳が混乱し、言語習得どころではなくなります。
このような場合は、まずは日本語脳に中学生レベルの日本語(中学校の教科書程度)をインプットし、その上で英語を日本語に変換して理解を進める形にしないと、子供の英語力は成長しない可能性が高くなります。
一方、小学校低学年のお子様の場合、日本語脳はまだしっかりとはできておらず、この段階で英語に触れ始めると、日本語脳と英語脳が別々に成長する可能性があります。
言語脳が分離した状態であれば、それぞれの言語脳を鍛えれば、独立して成長する可能性を秘めています。多くのインターナショナルスクールの卒業生や経験者から話を聞くと、日本語で話すときは日本語脳で、英語で話すときは英語脳で考えるようになるそうです。
この状態であれば、学年が上がり高度な英語になってきても、英語脳で吸収し、成長していくことができます。
日本語脳がその年齢に達していなくても、日本語への変換が不要なため、最終的には英語脳が思考脳にもなり、考える時も英語脳で思考するようになっていきます。
お子様をインターナショナルスクールで学ばせ始めた時期によって、日本語脳を基にして英語を変換する脳になるか、あるいは日本語脳と英語脳が分離した脳になるかが決まってきます。
どちらの脳が良いというものではなく、脳のパフォーマンスに影響するものではありませんが、言語習得のプロセスが異なるため、努力のプロセスも異なってくるというのは頭の片隅に入れておくと、お子様の言語習得をより適切にサポートできるかもしれません。
日本語脳と英語脳の連携(シリアル)か、独立(パラレル)かの違いはありますが、インターナショナルスクールの生徒が将来大学への進学などを考えるのであれば、「2.学問的に通用する英語レベル」の習得を目指す必要があります。
我々日本人が、小中高と12年間国語を学んでも現代文で満点を取るには追加の努力が必要なように、英語をベースとした授業で10年以上学んでいても、試験で高得点を取るレベルの英語力を身につけるにはさらなる努力が必要になります。
この点は、教育移住をお子様にさせようとしている親御さんには必須の理解としておきたいですね。
単に、インターナショナルスクールに通わせれば英語力が身につく、というわけではなく、「どのレベルの英語力が必要か?」、「英語を受け入れる脳がどのように発達しているのか?」を子供の様子を見ながら把握し、適切な教育を施すことが必要になります。
上記の内容を私の息子の成長に合わせて考えてみると、確かに脳の変化はあったかなと思うところがあります。
私の息子は4歳の時に、親の都合でマレーシアに来ることになり、マレーシア生活が10年を越えました。
4歳というと、日本語を吸収しようとして脳が日本語を求めている時期でした。夫婦で会話をしていると、息子がわからない単語にすぐに反応し、「その◯◯はどういう意味?」と頻繁に質問してきて、夫婦の会話が中断されることもよくありました。
その時期に、急に英語の環境に投げ出され、移住してからの最初の数ヶ月は本人にとっても困惑した時期だったと思います。精神的にも穏やかではなく、イヤイヤ期かなとも思いましたが、今思えば、脳が新しい言語に対し葛藤していたのかなとも思います。
その後、数年間は日本語の言葉も覚えつつ、英語の言葉も吸収していく日々が過ぎていきました。
しかし、日本語を話しながら、文の途中に英単語が混ざる「ルー大柴的な」話し方をすることが増えました。決して人を笑わせるためではなく、自然にそのような話し方になっていました。
その当時は、親としてはとても心配になり、日本語での教育に戻そうかと考えた時もありましたが、息子本人はマレーシアでの学校生活を楽しんでおり、そのまま様子を見ることにしました。
そんな時にCovid-19の影響で学校に行くことができなくなり、家族で過ごす時間が増えると、日本語を使う機会が急激に増えました。
この時期に、息子の脳の中では、英語脳と日本語脳が分離されたように思います。マレーシアに来てから5~6年目の頃でしょうか。
以降、日本語を使うときは日本語脳で、英語を使うときは英語脳になってきたように感じます。「ルー大柴的な」発言は全く無くなりました。
その後、息子本人に日本語を学びたいというモチベーションはなく、母親が漢字ドリルをさせていても身につくような状況ではなかったため、日本語は本人が必要と思った時にキャッチアップしてもらえれば良いと考えるようになりました。
そのため、現在は日本語を追加で学ばせることはせずに、英語力を「2.学問的に通用する英語レベル」に引き上げることを優先して、本人も家族も様子を見ている状態です。
上記で説明したように、息子の英語脳と日本語脳が完全に分離しているのであれば、息子は英語脳を日々鍛えている状況になるかと思います。「2.学問的に通用する英語レベル」になるよう努力している時期と想定して、英語力の強化をサポートしています。
しかし、なんともわかりません。「2.学問的に通用する英語レベル」に到達する道を進んでいるのか、あるいはまだ混乱しているのかは、今後の息子の成長を見守りながら判断していければと思っています。
マレーシア移住でお子様が英語を身につけられるかというと、私たち家族のように日々試行錯誤を重ねながら進めていくことになります。今後、マレーシアへの教育移住を考えるご家族には、上記のような困難が起こり得るということを想定した上でチャレンジしてもらいたいと思います。