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RTS開通後、ジョホールバル不動産はどう変わるのか?12年間ジョホールバルを見続けてきた弊社代表が考える「シンガポール勤務・JB居住」の未来

2RTS開通後、ジョホールバル不動産はどう変わるのか?12年間ジョホールバルを見続けてきた弊社代表が考える「シンガポール勤務・JB居住」の未来

 

以前、「ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)とRTS Linkがもたらす未来」という記事を執筆し、その中では以下のようなポイントを整理しました。

  • JS-SEZ(経済特区)とは何か
  • RTSがジョホールバルへ与える影響
  • Employment Pass(EP)保持者のジョホール居住の可能性
  • ジョホール不動産市場への影響

まだ読まれていない方は、ぜひ先にそちらをご覧ください。

ただ、その記事を書き終えた後も、私の頭の中には「RTSの本当のインパクトは何なのだろうか?」という一つの疑問が残り続けていました。

私が初めてジョホールバルを訪れたのは2014年のことですが、当時はRTSが2018年に開通予定であると言われていました。

  • Forest City(フォレスト・シティ)
  • Iskandar Malaysia(イスカンダル・マレーシア計画)
  • 中国資本による大型開発

当時の街中には未来への期待が満ち溢れていたことを、今でもよく覚えています。

しかし、その後の10年間で私は様々な景色を見てきました。不動産価格が急騰する時期もあれば、供給過剰と言われる時期もありました。コロナ禍では街から人が消え、RTSも延期に延期を重ねました。

だから私は今でも、「RTSが開通するから不動産価格が上がる」という単純な話だとは思っていません。

この12年間ジョホールバルを見続けてきて感じるのは、本当に重要なのは建物ではなく、「人の流れ」だということです。そして今、その人の流れを変える可能性を持つプロジェクトが、いよいよ現実(2027年開通)になろうとしています。それがRTSです。

1. RTSが変えるのは「交通」ではなく国境の「心理的距離」

ジョホールバルとシンガポールは地図上では非常に近い距離にあります。しかし実際には長年、「近くて遠い街」でした。

その最大の原因は国境にあります。朝夕の渋滞、長い入国審査、そして予測できない移動時間。ジョホールバルからシンガポールへ通勤するマレーシア人は数多く存在しますが、その負担は決して小さくありません。だからこそ、「シンガポールで働くが、ジョホールバルに住む」というライフスタイルは、一部の人を除けば現実的ではありませんでした。

しかし、RTSが開通すると状況は変わります。マレーシア側のBukit Chagar(ブキ・チャガー)とWoodlands(ウッドランズ)がわずか約5分で結ばれるようになるためです。

もちろん国境そのものは残りますが、人が感じる「心理的距離」は大きく変わります。これまで「海外へ行く」という重い感覚だったものが、「隣町へ行く」といったより手軽な感覚へと近づいていきます。

不動産において重要なのは、物理的な距離そのものではなく、「その場所で暮らす未来を具体的に想像できるかどうか」にあります。RTSの開通によって初めて、多くの人がジョホールバルで暮らす未来を描けるようになります。私はこれこそがRTS最大の価値だと思っています。

2. ジョホールバルは「深圳」にはならない

2010年代、多くの人はジョホールバルを「第二の深圳(しんせん)」と呼びました。「香港と深圳」「シンガポールとジョホール」という、大都市に隣接する地理的な構図は確かに似ているように見えます。

しかし私は今、その比較は少し違っていたのではないかと思っています。

深圳の背後には「中国」という巨大市場がありました。歴史的な改革開放政策があり、何億人という国内の人口移動があるなかで、深圳はただ香港の隣だったから成長したのではありません。中国という国全体の凄まじいエネルギーが流れ込んだからこそ爆発的に成長したのです。

一方で、ジョホールバルの背後にあるのはマレーシアです。マレーシアは非常に魅力的な国ですが、中国のような圧倒的な人口流入圧力は存在しません。そのため私は、「ジョホールバルは第二の深圳になる」という未来よりも、別の未来の方が現実的だと考えています。

私が参考になると思うのは「スイスとフランス」のモデルです。

実は世界には、「国境を越えて働き、別の国に住む」というモデルがすでに定着している地域が存在します。

スイス・ジュネーブ と フランス国境地域

多くの人がフランス側に住みながら、物価の高いスイスで働いています。理由は単純で、フランス側の方が住居費が安く、より広い家に住めるからです。

デンマーク・コペンハーゲン と スウェーデン・マルメ

両国を結ぶオーレスン・リンク(橋)の開通後、マルメに住みながらコペンハーゲンで働くというライフスタイルが完全に定着しました。

深圳モデルと欧州モデルの比較

そこには確かに国境が存在するものの、人々の「生活圏は一つ」です。
私はジョホールバルの未来は、深圳モデルよりもこうした欧州型モデルに近いと思っています。

3. 本当の主役は「EP保持者」かもしれない

現在、ジョホールバルの不動産市場を支えているのは、投資家やマレーシア人通勤者が中心です。しかし、本当に市場の構造を変える可能性があるのは別の層、つまり「シンガポールで働くEP(Employment Pass)保持者たち」です。

例えば、シンガポールCBD(中心業務地区)で働く40代の日本人マネージャーを想像してみてください。

現在は、シンガポールの家賃高騰の煽りを受け、月6,000SGD(約67万円)の決して広くはないコンドミニアムに家族4人で住んでいるとします。しかしジョホールバルなら、同じ予算(あるいはそれ以下)で以下のような生活が手に入ります。

  • ゆったりとした庭付き一戸建てや広いリビング
  • 複数台分の駐車場
  • 質の高いインターナショナルスクールへのアクセス

もしJS-SEZを通じて制度が整い、「ジョホール居住・シンガポール勤務」が一般化したらどうなるでしょうか。市場の需要は以下のように綺麗に二極化するはずです。

単身者・利便性重視

Bukit ChagarやJB Sentral周辺の駅近エリア

ファミリー層・環境重視

Eco Botanic、Senibong Cove、Puteri Harbour、Horizon Hills、Molekなどの居住環境重視エリア

その時初めて、ジョホール不動産は「投資商品(マネーゲーム)」から「居住商品(実需)」へと変わります。精度高く磨かれたエリア選定が始まり、本当に価値が上がるのは、「外国人が10年住みたいと思える街」になるでしょう。

4. JS-SEZの本質は「工場誘致」ではない

ここで一つの疑問が浮かびます。シンガポールは本当にそれを許すのでしょうか。もし多くの優秀な人材がジョホールバルへ移住したら、シンガポール国内の住宅需要や消費は流出してしまうかもしれません。

原因を紐解くと、現在のシンガポールは以下のような深刻な課題を抱えています。

  • 慢性的な土地不足
  • 住宅価格・家賃の上昇
  • 労働力および専門人材の不足
  • オフィスコストの上昇

つまり、シンガポール政府は「人が出ていくリスク」と、「経済圏を拡張して自国の競争力を維持するメリット」を天秤にかけているのです。

私はJS-SEZの本質はここにあると思っています。単なる工場誘致でも、目先の税制優遇でもありません。その本質は、「シンガポール都市圏をジョホールまで拡張する、国家規模の壮大な実験」なのです。

おわりに

私がジョホールバルへ来た2014年、RTSはまだ遠い未来の話でした。そして2027年、その未来がいよいよ現実になります。

しかし本当に面白いのは、RTSが完成する「その日」ではなく、その先に「シンガポールで働き、ジョホールバルで暮らす」という新しい生き方が当たり前になる日かもしれないのです。

もしその未来が実現するなら、ジョホールバル不動産の価値は、単なる投資対象としてではなく、人々の人生を支える「生活基盤」として本質的な再評価を受けるでしょう。

ジョホールバル不動産の未来は、敷かれた線路の上ではなく、人材政策と国境制度の先にあります。12年間この街を見続けてきた1人として、RTSという一本の線路の開通を起点に、この街がどう変わっていくのか、これからもその変化を見届けていきたいと思っています。

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